自分の子どもを守りたい。

瀬戸恵深さん|徳島ママ防災士の会Switch 代表 とくしまゆらし隊

子どもを守りたい。親なら誰もが持つ、共通の思いです。

2018年。勤務していたコミュニティFMで、社員が順番に防災士資格を取ることになり、瀬戸恵深さんも学び始めました。

当時、娘は2歳。

学ぶにつれて「もし自分に何かあったら、この子を誰が守るのか」という思いに駆られました。

親として、何から始めればいいのか。

1.子育ての中でも、できることを

防災について学んだことを、子育てをしているお父さん、お母さんにも共有したい。

瀬戸さんが向かったのは、子ども食堂や子育て支援拠点。親子が集まる場所でした。

日々の子育てに追われ、災害への対策まで考える余白がない親に共有したのは、忙しくてもできる、いつもの持ち物に足す備えでした。

たとえば、いつも持ち歩いているマザーズバッグ。

着替えや飲み物などに、もしもの時に必要になるものを足す。

もう一つは、子どもの情報を備える「パーソナルカード」。

親と子どもが別々の場所で被災した時に備え、子どもの名前、住所、連絡先、アレルギーなどを一枚にまとめます。

親がそばにいない時にも、子どもに必要な情報が周囲へ伝わる。離ればなれになった時には、家族へつながる手がかりにもなります。

マザーズバッグやパーソナルカードを使った活動がきっかけになって、2021年には徳島市の子育て世帯向け事業で、「マザーズバッグで防災」「パーソナルカードで防災」のワークショップを担当しました。

2.ママ防災士

子育てをしている今の自分たちだから、伝えられることがある。

瀬戸さんは「ママ防災士」という肩書きをつくりました。

名刺にシールを貼り、ブログを立ち上げます。

「ママ防災士」と検索したら、引っかかるかもしれない。自分と同じ不安を抱える人に気づいてもらいたいと考えての肩書きでした。

発信を続けていると、周りにも防災士資格を持つお母さんがいることが分かってきます。瀬戸さんの話を聞いて防災士に興味を持ち、資格を取った人もいました。

一人、また一人と、同じ想いを持つ人との繋がりができました。

2022年2月、「徳島ママ防災士の会Switch」が立ち上がります。瀬戸さんが一人で活動を始めてから、約3年半が経っていました。

3.自分の好き、得意を活かせる

Switchに集まった人たちは、それぞれ違う仕事や経験を持っていました。

管理栄養士、手話通訳士。
発達障害のある子どもを育てるメンバーもいました。

管理栄養士のメンバーからは、災害時の食やアレルギーのこと。
発達障害のある子どもを育てるメンバーからは、自分たちが気づいていなかった課題も。

話を聞くたびに、それまで見えていなかった視点が出てきます。

防災士と管理栄養士。
防災士と手話通訳士。
防災士と子育て。

瀬戸さんには、ラジオの仕事がありました。

人に話を聞く。
言葉にする。
わかりやすく発信する。
誰に伝えれば、物事が動くのかを考える。

「情報と情報をつなぐ」「情報と人をつなぐ」ことがラジオでできることです。

大切なのは、同じ温度感で、命を守ることを話せる人を見つけることでした。

みんな、はじめからできる人なんていない。できることから始めればいい。

4.「逃げなきゃソンソン」

その頃、NPO法人減災教育普及協会と出会います。

自分が暮らす場所では、何が起こる可能性があるのか。

同じ徳島でも、住む場所によって災害の種類は違い、必要な備えも変わります。

防災には、正しい知識が必要です。

そして、その知識をどうすれば身近なものとして伝えられるのか。

両国本町商店街では、防災について学び、まちを歩き、「みんなの安心安全マップ」をつくりました。

防災マップづくりから生まれたのが、阿波おどりを使った防災です。

「同じ阿呆なら逃げなきゃソンソン」

阿波おどりの掛け声を変えて踊り、期間中には津波避難場所を示すピクトグラムを商店街に掲げました。

祭りを見に来た人も、踊る人も、徳島の人たちがよく知っているものを入口に、防災に触れることができます。

減災教育も、徳島でどう届けるか。

瀬戸さんは、Switchの仲間や、保育や教育の現場に近い人、防災に関わる人たちへ声をかけていきました。

そして、徳島県内の有志による「とくしまゆらし隊」が結成されます。

瀬戸さんは、「ゆらし隊」の境目がはっきりしないところも魅力だと話します。

活動先では、その地域の人が一緒に手伝う。
以前に体験した子どもが「僕、やったことあるよ」と、今度はほかの子どもへ伝える。

祭りやダンスのような身近なところから、防災に触れる。
地域で起こり得る危険を知る。
体験する。
そして、知ったことを誰かに伝える。

自分たちが暮らす場所を知り、自分たちも地域の安全を高めていく。

「徳島のことは徳島でやらないかんね」

地域のことを知る人が、地域に合ったやり方で伝える。参加した人が、今度は伝える側になる。

地域の人が担うからこそ、活動は一度きりで終わらず、その地域で継続していくのです。

5.防災を、日常の中へ

2026年4月、瀬戸さんはエフエムびざんを離れ、東部防災館「おきのすインドアパーク」で働き始めました。

おきのすインドアパークは、転職前からSwitchの活動で何度も足を運び、防災について相談を受けながら、仲間と協力していた場所でした。

施設では、防災の取り組みをさらに進めるため、防災を担う人材を配置する話が動いていました。

瀬戸さんに声がかかります。

施設の事業や設備、人を育てることにも関わる。
活動を持続させる。

「未来に残していける仕事」がしたい。

瀬戸さんは転職を決めました。

おきのすインドアパークには、スポーツやカルチャーを目的に訪れる人も多くいます。

瀬戸さんが考えているのは、防災を「どう日常の生活の中にリンクさせていくか」という仕組みです。

親子でブロックを使い、土地の特徴や危険な場所を見ながら、災害に強いまちを考えるワークショップ。

防災段ボールめいろ、停電を体験するプラネタリウム、「だれといっしょに避難する?」、パーソナルカードづくり。

徳島ゆらし隊が地域で重ねてきた活動は、県との連携にもつながりました。

NPO法人減災教育普及協会と徳島県は、地域防災力の向上に向けた連携協力協定を締結。

地域で続けてきた一つひとつの実践が、県との連携という形に結びつきました。

キャプション:活動の輪は学生にも。2026年7月、徳島大学救急災害医療サークルTALSの有志を中心に「とくしま学生ゆらし隊 with TALS」が発足。とくしまゆらし隊とともに、地域での実践を始めています。

徳島県との連携から、新しい伝え方も生まれました。

「逃げなきゃソンソン!防災ダンス」

子どもや親子向けのダンスや振付を手がける、徳島県出身の元保育士・三原勇気さんを中心に、徳島ゆらし隊、Switch、音楽に関わる人たち、徳島県危機管理部の若手職員が一緒につくりました。

第1弾は「がたぐら地震編」。

阿波おどりで生まれた「逃げなきゃソンソン」が、今度は子どもたちが日常の中で踊れる防災ダンスへとアップデートしました。

自分の子どもを守ることから始まった活動が、確実に地域の子どもたちに広がっています。


取材・文
NPO法人減災教育普及協会
理事 村上智一

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